「トリガー」 (「三つの未来」を読んで)
ひとくくりに「日本人は」と語るのは非常に危険だと思う。ただ、これまでの歴史とここ最近の状況をみるに「日本人は・・・」と愚痴の一つも言いたくなるのも事実である。
思うに、「日本人は」みずから創造したり変革したりすることは苦手で、他人からの指示や保護、あるいは先べんをたよりに目的を特定化することができたら、想像以上の力を発揮し、周りが驚くようなスピードで結果を出す。あるいは細々とした改善は得意で、よりクオリティの高い成果を出す。他人との対立は好まないくせに自分の相対的な目先の損得には執拗にこだわる。
このような「日本人の」特性を理解した上で、課題書である「3つの未来」を読み進めてみた。
以下に私の感想および考えたことを述べる。


1.3つのシナリオ
まず3つのシナリオを、私なりに簡単に分析してみたい。
はっきりいってどのケースも十分ありうるのではないかと感じた。
「シナリオ1 日本空洞化」は一言で言うならば「緩やかな衰退」。(結果的に)何もしなければこのシナリオがもっとも現実に発生しうる。絶対に避けなければならないシナリオであることはいうまでもない。
「シナリオ2 日本再生」は一言で言うならば「どたんばの開き直り」。指導的立場の政治家がリーダシップを発揮し推進するという形だが、この部分についてはちょっと悲観的な感想を抱いた。はたして、カリスマが現れるか?自立という形でこのようなシナリオが展開できるか?という点は日本人の一般的な特性から考えて虫がよすぎる気さえもする。
「シナリオ3 安保で自立を迫られる日本」は一言で言うならば「外的要因による現状打破の胎動」といったところか。シナリオ2が自立であったのに対し、こちらは外的要因により動かされようとしているという点で、これまでの日本の歴史から見ても割と現実感があるように思う。おそらくこの後の展開は、多少のいざこざはどうしてもあるにせよ、ある時期から急峻によい方向に展開していくのではないかと想像する。
これらの分析を踏まえてシナリオの可能性を掘り下げてみる。
まず、「シナリオ1」の「ゆるやかな衰退」は避けなければならない。ほうっておけば決してよい方向に転がらず破滅に向かうのは歴史が証明している。いったん破滅してしまえばその後は好転するだけだと考えればこの選択肢もないわけではないが、それにはあまりにも代償が大きすぎる。私たちが幸せを実感しつづけるためには避けなければならない。
であるならば、「変わらなければならない」ということが前提となる。変わるためのシナリオとしてもっともありがちでありかつ即効性のありそうなものは「外的要因」をトリガーとした変化である。第二次世界大戦の終戦、明治維新を例にとればいずれも外的要因による旧体制から新体制への変化である。ただ、「外的要因」と一言にいっても程度に差はある。たとえば第二次世界大戦の終戦というのは「ゆるやかな衰退の結果の破滅」に極めて近いケースである。このように考えると、うまく「外的要因」を利用することが重要なキーとなる。
つぎに、「外的要因」で急峻な変化を遂げることができたとしてもいつまでも自立できず「外的要因」に頼ってばかりというわけにはいかない。第2フェーズとして、自立が必要となる。この自立を促すためには、きっかけとなるトリガーが必要となる。自立を遂げてこそ、はじめて日本再生となるのである。

「外的要因」→「急峻な変化」→「限界」→「自立への一歩」→「再生」

こう考えてくると、きっかけとなるトリガーが非常に重要な要素となる。
トリガーとしてはどのようなものが考えられるか?

アジア共栄圏の構築(ユーロへの対抗)
朝鮮半島の統一
中台の戦火
日米安保のリセット
米国との貿易摩擦悪化、制裁措置
ユーロの実質的活動開始
環境破壊
首都圏大地震
首都移転
自民党の解散
年金破綻
定期預金ペイオフ
郵便貯金破綻
情報技術の進展に伴う社会生活の変化・・・・・

この中で、急峻な変化(第1フェーズ)のトリガーとして考えられるのは「日米安保のリセット」「アジア共栄圏の構築(ユーロ対抗)」「首都圏大地震」というところが考えられる。
「首都圏大地震」は天災ということで、人の力ではいかんともし難い面があるが、前2つのトリガーは事前の対応によりインパクトが大きくもなり小さくもなるものである。「シナリオ3 安保で自立を迫られる日本」はまさに「日米安保のリセット」をトリガーに大きな変化を始めようとしている。

ただ、このような「外的要因」による大きなトリガーが引かれる前に、自らがインパクトの小さいトリガーを引くことにより、もっと早期によい方向への変革を始めることができるかもしれない。それが「シナリオ2 日本再生」で描かれている形である。確かに虫がよすぎるとはいうものの、このシナリオを理想像として掲げておきたい。


2.インタビューノート
本書の半分以上のページ数を占めるインタビューノートであるが、率直な読後感はひとこと辟易。正直な話、途中から読むことが非常に苦痛に感じた。
まず、3行程度の意見が、テーマごとに分類されているとはいえ、延々とつづく。前後の意見につながりがないだけでなく、まったく相反する意見が並んでいたりと、読み進めることに骨が折れたのは事実である。しかもその中には本書としての意志はほとんど感じられない、ただ整理して並べてみただけという印象である。資料としての位置づけでとらえればそれなりに意味があるのであろうが、はたして本書の半分以上のボリュームを占めるのは私としては不満が残る。
さらに、「〜ない」「〜すべきだ」「〜ではないか」・・・悲観論、べき論、うわべだけの評論なんてうんざりである。2、3行の中で論理的に意見を表現することも難しいことは充分理解できる。ただ、自分自身に何ができるか?どうしたいか?という主体性が感じられない意見が多いことが読む側の気分を萎えさせる。自分以外のだれかに頼っており、しかもそれを疑問に思っていない節も見受けられる。はっきりいって無責任で見苦しい。
別の視点からみれば、これが現在の日本人の姿を如実に示しているということが言えるのあろう。
ただ、そんな中にもいくつか建設的な具体論や有益で示唆に富んだ指摘も語られている。
そのような意見を評価し支援する環境が今後ますます必要だろう。うまく生かして伸ばす手だてを私も考えてみたい。


3.では私はどうしなければならないのか?
このような現在そして未来の日本に、私は生きていかなければならない。
私自身はどうしたらいいのか。

まず、自分自身の意見をもつことであろう。しかも、できるだけ深く考え抜いた結果の意見でありたい。ほかの誰のでもない自分の信念。すべての考えや行動の根っことなる部分を鍛えておかなければならない。
つぎに、積極的に参加すること。みずからが政治家や閣僚となって国家運営に参画することももちろん結構だが、まず国民の参政権をしっかりと行使しよう。選挙に行こう。政治がおかしいなと思ったら手をあげよう。われわれの代表が不適切だと思うならば罷免しよう・・・・
経済活動も自分の意志で参加してみよう。真剣に会社に勤めることも立派な経済活動だ。
まずは自分のこととして、自らがプレイヤーとして参加しなければおもしろくない。
そして、日本から逃げ出さない。日本という国をもっともっと好きになりたい。
なんといってもかけがえのない母国である。ナショナリズムとかセンチメンタリズムとか揶揄される向きもあるかもしれないが、しかしこれは紛れもない事実なのだ。日本人としての誇りを持ちたい。持てるように自らが変えていかなければならない。

以上、それぞれは実に小さなことかもしれないが、たとえどのようなトリガーが引かれたとしても柔軟に対応できるだけの力は備えておかなければならない。
さらにいえば、トリガーが引かれる前に、先を読んだ手の打てるような、そんな洞察力を養っておきたい。


4.さいごに
日本人を揺さぶるトリガーが引かれるまで緩やかな衰退を続けていくか、先を読んでトリガーが引かれる前に自発的に動くことができるか。
それはひとえにわれわれ自身にかかっている。
鮮やかにクリアできるか、泥沼にはまっていくか。結局はわれわれ自身の責任なのである。
この点を理解した上で、今度は自分自身で「もうひとつの未来」のシナリオをプランニングしてみるのがよいだろう。

以上


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