別館:な行
「なぜこの店で買ってしまうのか」
パコ・アンダーヒル著,鈴木主税訳,早川書房,1800円
・売れ行きを左右する尻こすり現象って知ってる?
・銀行の両脇の店舗が売れないって本当?
・女性は女同士だとショッピング時間が長くなるのはなぜ?
・買い物かごの種類は一つしかないと思ってない?
・レジで待ち時間を短縮する画期的な方法は?
とにかく,すさまじいと思いました。
マーケティングについて,これだけ多面的に実地で検分を行い,その上で考えうるさまざまな分析を加えて考察するという姿勢にまず感服します。
その上で組み立てられた仮説は,かなり現実味があるだけに有効かつ興味深いと思います。
だからといって,専門書的に難しく書くのではなく,より分かりやすく丁寧に書いてあるので,読む方も読みやすくあきません。
商売をしている側でなく,消費者側としてもこういう知識を持つと持たないとでは,損得が出てくるのではないでしょうか。
なぜ日本人は日本を愛せないのか
「人間を幸福にしない日本というシステム」のウォルフレンの新刊です。
相変わらずの切れ味はさすがです。
(特に戦後)「愛国心」というものに対しては過剰な反応を示すくせに、何か対外的にぶつかることがあると「日本の固有の文化」のせいにして逃げてまうという奇妙な習性をもった日本人に対する痛烈な批判。
例えば上や外からの与件に対する対応は非常に得意で、自身が大きな変化を伴うような事項に対しては枝葉末節の問題点をあげつらって徹底的に批判するような傾向を指摘し、将来日本をよいものにしていくためにはどうしていけばよいかという提言を、外国人という立場から率直に述べています。
ここでいわれている、「日本」を「企業」や「組織」に置き換えても結構通用する話だと思いました。
要は「自分で意思を持て」ということですね。
350ページを超えるボリュームですが、一気に読めば気分は妙に盛り上がります。このあと引き続いて、福田和也の「壊滅」など読めばなおさらです。
「なせばなる民営化JR東日本」
松田昌士著,生産性出版,1400円
第1章 なぜ国鉄改革が必要だったのか
第2章 国鉄改革前夜の攻防
第3章 国鉄から新生JRに向けて
第4章 民営化後の歩み
第5章 日本に必要な改革とは何か
第6章 鉄道ルネッサンスを目指して
郵便局や特殊法人など、なかなか改革が進みません。既得権益などなど改革してほしくない人がいるのは当然なわけで、でもできない理由をあげればきりがない。構造を変えようとする場合には、いかにすれば可能なのかを考えて、そして工夫をして、そして変えていくのです。当然長期戦略が必要で、それがなければ抵抗勢力を説得することすらできません。
JRの分割民営化は、そういう意味で非常にすばらしい成果だったわけですね。確かに思えば、JRのサービスってこの10年でずいぶん向上したように思います。駅員さん、緑の窓口の係の人、駅の中にあるキオスクの人・・・
松田さんのような、バイタリティと夢と希望を持った大きな力が生きているのだな、そして松田さんを支援した人々はすばらしかったのだなということです。
「なぜ人を殺してはいけないのか」
小浜逸郎著、洋泉社、680円
哲学というよりも倫理学的な主題を根源から問い直す。
「人は何のために生きるのか」
「自殺は許されない行為か」
「「私」とは何か,「自分」とは何か」
「人を愛するとはどういうことか」
「不倫は許されない行為か」
「売春(買春)は悪か」
「他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいか」
「なぜ人を殺してはいけないか」
「死刑は廃止すべきか」
「戦争責任はどう負うべきか」
このような根源的な質問を浴びせられた場合にはひるんではならない。
・なぜ自分がその問いにつかまってしまったのか,その動機を考える。
・簡単な解答はありえないと覚悟する。
・問い方そのものにまずい点はないかどうか検討し,まずければ,もっとよい問い方を編み出す工夫をする。
言葉遊びではない。屁理屈でもない。難題を掲げてしてやったりという人をやり込めるのでもない。
本当の課題,問題を見つめて,それに対する処置を考えましょうという試みです。
「夏の災厄」
篠田節子著、毎日新聞社、2000円
ヒーローなきパニック小説。
東京郊外の小さな町に突如として発生した感染性の病。その症状は日本脳炎に似ているが、人から感染することと劇症的に症状が進み致死率は半分以上。
行政が後手後手になっている間に町全体がパニックと化していく。
廃棄物不法投棄による環境破壊や医療行政、医療研究機関の実験姿勢といった点に対して問題提起しながら、民間の人々の力強さも感じさせるなど、実に篠田節子らしい。
ただこの冬、インフルエンザが大流行し国内でも何人かの命が奪われていることを考えるに、結構しゃれになっていないなと思った次第です。
「21世紀日米共生の時代」
日米21世紀委員会監修、PHP研究所、1800円
「日米関係のあるべき姿」「日本を強くする改革−経済と教育−」「競争から協調への転換」「21世紀の経済・成功の鍵」「東アジアへ貢献する日米関係」「グローバル経済社会における新しい教育」・・・・
といったテーマにおいて、日米の論客が提言を行っていく。
日本は世界2位の経済大国ということについて、日本人以上に世界各国の人の方がその重大さを認識しているように思う。
米国との協調関係が、世界の明日を切り開く可能性を持っているといっても過言ではないだろう。
日本人の一部もようやくそのことに気づき始めた。
このことが、今後どの方向に展開していくかは、次代を担うわれわれ次第か。
「21世紀の学校はこうなる」
寺脇研著,新潮OH!文庫,581円
闘う文部官僚寺脇研(愛称ワッキー(笑))の放つ、文部省の考えるゆとり教育の本質の説明。
まあ、それなりにゆとり教育というものがどういうもので、どういった経緯で考え出されたのかが分かったように思います。
とはいえ、本としては???です。論理が飛躍するわ、理由付けが強引だわ、あまりにもアバウトだわ、むちゃくちゃ。結構笑えました。最後に
私の体験談なんてのもついてますが、これも参考にならん。
実際に話をするといい人なのかもしれませんが。
でも、誰がワッキーなんて呼んでんだろうね。
ちなみに「まれに見るバカ」(勢古浩爾著 洋泉社新書)で も酷評されてます(笑)。
「日本暗殺総覧
この国を動かしたテロルの系譜(ベスト新書 42)」
泉 秀樹著、べストセラーズ、680円
幕末維新に興味を持っていろいろな文書などを読むと、人と人の殺し合いにまつわる思い や考えが複雑に渦巻いていることに改めて感じざるをえない。そして、その決定版的な行動
が暗殺ということになるのかもしれない。
この本には、日本史に登場する主な暗殺事件において、そこに関係する人々の思いや暗殺事 件に駆り立てるまでのプロセスなどをていねいに説明し分析してくれています。
単に人の血に飢えていたからというだけのものもあれば、きわめて戦略的かつ計画的な暗殺 もあり、その暗殺そのものがもし失敗していたら、あるいは成功していたら、今の世界も
大きく変わっているかもしれない・・・・
そんなことを考えながら読み進めると、単なる歴史もまた違った見方ができるかもしれません。
「日本経済50の大疑問」
森永卓郎著,講談社現代新書,680円
・不良債権はなぜ、いつまでたっても増え続けるのか
・債権放棄などの借金棒引きは、なぜ許されるのか
・財政再建と景気回復は本当に両立するのか
・アメリカは本当に市場主義で強くなったのか
・「インフレターゲット」は正しいか
・「痛み」とは、誰がどのように受けるのか
などなど、森永さん流の解説で、わかりやすく解きほぐしてくれています。
日ごろなんとなく思っていることや、あまり分からないくせに表面的に理解しているようなことを、ていねいに解説してくれているのがいいです。
改めて感じたんですが、日本経済って日本銀行が鍵を握っているんですね。
「日本のゴミ
」 佐野眞一著、ちくま文庫、900円
廃車、古着、廃乾電池、古紙、建廃、残飯、ペットの死骸、そして核のゴミ。
現代の消費社会が次々と生みだす膨大な量のゴミ。それらのモノたちが漂着する果てまでをたどり、消費活動の最末端から日本社会を逆照射する。ゴミ問題の最前線を知るための一冊であるとともに、世紀末ニッポンを裏側からえぐるもう一つの文明論でもある。
これは、正直言っていろんなことを考えさせられました。
少なくとも、今日から、分別ゴミをきちんと仕分けようと思います。
しかし、佐野さん、ものすごい行動力です。ここまで実際の現場を見、関係者の方々に話を聞き、そして実感して生み出される言葉は、重さが違います。
なお、本書は10年以上も前のレポートということもあり、現在の環境政策と大きく変わっている部分もあるでしょう。この点は含み置いて読んでいくと、よりいっそう興味深いものになると思います。
「日本の盛衰
」 堺屋 太一著、PHP新書、780円
1980年代には世界一の繁栄を誇った日本が、今は長期不況と社会の劣化に苦悩している。日本はこのまま衰亡の道を辿るのか、再び隆盛を取り戻すことができるのか。本書では、「今」を知り「未来」を探るため、まず日本の「過去」を検証する。近代百年で築き上げた官僚主導の文化を徹底解明し、それが生んだ「負の資産」をいかに克服するかに迫る。
要するに、人類文明の段階が完全に変わったのに、日本では今なお前段階の方法で対処しようとしているということだ。
そして、それに対する処方箋は、本書でも明確にはうたわれていない。なんとなく分かるようなイメージのレベルか?
少々、暗い気持ちだけが残った。
「ニッポン発情狂時代
」 佐野眞一著、ちくま文庫、840円
20年近く前(1985年)のルポ。ここで佐野さんの選んだテーマは“セックス”であった。テーマは”セックス”であろうと、圧倒的な行動力がうかがわれる。
ここに収められたルポは当時「週刊文春」に連載されたもので、ネタは4つ。
「コンドームの20世紀」(コンドームの衰亡と日本人の性意識の変遷)
「買春ツアーの構造」(東南アジアへの買春ツアー)
「ソープ村の社会学」(滋賀・雄琴)
「セプテンバー・セックス」(老人のセックス)
それぞれ、普段あまり考えないような内容であるわけで、それだけで非常に興味深く読むことができる。
ただ、「コンドーム・・・」の話は少々発散気味で、読み進む上で少ししんどいかなと思える部分も。
なお、本書は20年近くも前のルポということもあり、現在のそれぞれの状況と大きく変わっている部分もある。この点は含み置いて読んでいかなければ妙な誤解をするので要注意。
「日本の論点 生き残るために」
文芸春秋編、文芸春秋、2700円
99年の日本経済を読む上で重要と思われる79の論点について著名な経済人などが語っている。
これからの企業戦略・ビジネスマンの生き方を考える上で重要となる国内・国際政治や経済理論・福祉など幅広い論点が取り上げられている。
「日本への直言」
稲盛和夫著、PHP研究所、1500円
崩れ行く日本に対し、主に企業経営者に対する緊急提言。
官依存をやめよ。国民よ大いに政治を語ろう。なぜ経営に哲学が必要なのか。才能を私物化してはならない。物心一如の新しい文明へ・・・
など、著者独特の語り口で今の世の中を斬る。
「人間を幸福にしない日本というシステム」
(K.ウォルフレン著:毎日新聞社)
まず、タイトルが刺激的で、シンプルな装丁に惹かれた。
内容は、官僚の陰の権力に左右される日本の異常な体質が、世界的な流れから離脱しつつある点を指摘。官僚大国に対する、政治家の本来の政治家としての力の発揮と、市民の「シカタガナイ」症候群からの脱却を促している。また、マスコミや各種団体のレトリックや圧力に対してのコメントも辛辣である。
ポイントは、
・世間の風評や知らず知らずのうちに信じ込んでしまっている「偽りのリア
リティ」の見極め
・これまで何となくごまかされてきて曖昧なまま放置されていた、責任ある
立場の人々に対する「説明する責任(アカウンタビリティ)」の追求である。
少し極端すぎるきらいの論調ではあるが、その理論は真っ当な気がする。
「ニュースキャスター
」 筑紫哲也著、集英社新書、660円
『ニュース23』誕生の過程や裏話などとともに、筑紫氏のこれまでの記者経験や人間関係、メディア論が語られている。決して大袈裟な語り口調ではなく、実感を率直かつ冷静に語っている印象だ。
私が一番印象的だったのは、『ニュース23』というチームにあっては筑紫さんは編集長という立場であったにもかかわらず「君臨すれども統治せず」を通しているという点。さらに、メディアのあり方については「メディアは権力、権威だと言われながらも、そのメディアのタブーに対して大胆な批判精神を貫いているということ。
マスコミ以外の方にも、いわゆる組織論的な面を学ぶのには非常によい教科書ではないかと思います。
「入門バクロ経済学
(朝日選書 704)」 金子 勝・テリー伊藤著、朝日新聞社、1,000円
慶応大教授としてテレビでも大活躍する経済学者と天才プロデューサーが、日本の経済について考える。ちまたにあふれる入門書ではわからない「経済」の本質に迫る、異色の対談集。
はっきりいってくだらないと思ったんですが、つい読んでしまいました。
基本的には、「今マスコミ等で喧伝されている経済状態や経済学者の言うことを鵜呑みにするなよー」ということなんですが、「じゃあ、だからどうしたらいい」はあまり見えてきませんでした。
まあ、物事はいろいろな見方をして、その上で自分自身の頭で考えて判断をするのがよく、そのためのヒントはたくさん詰まっているのではないかと思います。
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