「TACNEWS」2002年4月号(3月1日発行)
特集
<タイトル>
「上級シスアド連絡会」の活動状況
上級シスアド連絡会会長
島本 栄光氏
<リード>
「上級システムアドミニストレータ連絡会」は、経済産業省情報処理技術者試験「上級システムアドミニストレータ」の合格者ならびに有志によって構成された、当該資格区分としては最大規模の組織団体です。どんなメンバーが集まり、どのような活動をしているのか、会長の島本栄光さんにお尋ねしました。
<プロフィール>
しまもと・さかみつ 1965年生まれ、広島県出身。KDDI株式会社(情報システム本部システム企画部)勤務。主な取得資格は特種情報処理技術者、システムアナリスト、上級システムアドミニストレータ、システム監査技術者、プロジェクトマネージャ、システム運用管理エンジニア、CISA(米国公認情報システム監査人)など。『上級シスアド合格への道』(共著/同友館)、『情報セキュリティ「専門知識+記述式問題」重点対策』(共著/アイテック)他の著書がある。上級システムアドミニストレータ連絡会会長。情報処理学会、日本システム監査人協会、情報システムコントロール協会、日本システムアナリスト協会会員。趣味は野球(広島カープファン)と読書(好きな作家は篠田節子、佐野眞一)。
<本文>
当事者意識で参画して欲しい
――「上級システムアドミニストレータ連絡会」(JSDG)設立の経緯からお聞かせください。
島本 上級システムアドミニストレータ(以下,上級シスアドという)は、平成8年に新設された情報処理技術者試験の高度区分に属する主にユーザー部門の人材を対象とした資格試験です。第1回試験は5,361名の受験者に対して325名が合格しました。その合格発表直後に合格者の有志が数名集まって、パソコン通信Nifty−serveの資格試験勉強会フォーラム「FLICS」において、合格者の交流を目的として「協会設立準備会」を立ち上げたのが、この連絡会発足のキッカケとなりました。最初はNifty―serveのフォーラムというクローズドな場だったわけですが、それをもっとオープンにして行こうということで、インターネットを使って自動的に同報メールができるようにとメーリングリストを開設し、それによって情報交換や議論をする形がベースとなり、現在に至っています。設立当初、私はこの連絡会の存在を知らなくて、立ち上がって半年くらい経った時に、インターネットで検索していてたまたま見つけたのです。私も第1回試験の合格者でしたので、せっかくそういう場があるなら色々と意見を言わせてもらいたいということで参加しました。
――上級シスアドの合格者というのは、どういう人材像をイメージすればいいのでしょうか。
島本 いわゆるユーザーの立場で業務システムや情報システムの改善・企画立案などに従事されている方が多く、システムエンジニアや情報処理の専門家とはちょっと違う、割と新しい人材像だと思います。試験自体もかなりハードなもので、他の高度区分と同じように、最後に4000字の論文を書かされたりするものですから、合格者はそれなりの勉強を積んで受かって来ているわけです。合格をキッカケに、それを仕事に生かし、自分の幅を広げて行きたいという方が多いと思います。例えばシステムアナリストなどの場合は、システム部門の方やSIベンダ、ソフトウェアのかなりシニアなポジションにいる方とか、わりと限定される傾向にありますが、上級シスアドの場合は色々な業種の方がおり、独立されている方、あるいはシステム部門やSIベンダにいながら上級シスアドの勉強をしている方もいます。当連絡会においても,人の分布が収束されず、バラエティーに富んでいるのが特徴です。――連絡会に参加することによって、どんなメリットがありますか。
島本 メンバーの職業上の立場はそれぞれ違いますが、情報システムをうまく業務に活用したいとか、何か困っていることに対して問題解決がしたい、古い組織の文化を変革させたいといった問題意識を持つ人たちの集まりなので、その意味では共通意識があるわけです。そこで、「こんなことで困っています」と呼びかけることによって、「それなら、うちではこうやって解決している」「それは誰々に聞けば分かる」といったようなアドバイスが連絡会の中で受けられるのが最大のメリットだと思います。距離と時間的な制約をクリアできるインターネットのメールやWebサイトがどんどん使えるようになってきていますので、それを活用してバーチャルに全国組織と連絡を取り合うというのが、連絡会の基本的な活動の柱となっています。しかし、新しく入って来られる方の中には「会から何かしてもらえるのですか?」「入ると何かいいことがあるのですか?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、会は何もしてくれません(笑)。自分で何かやろうとしない限り、何も動かないのです。個人の会員一人ひとりの参画意識と言うか、当事者意識というものが、連絡会のエネルギーの源となっています。ですから、「自分はこうしたい」「こうすればできる」という積極的な姿勢で、会を盛り上げて欲しいですね。
ホンネとホンネで意見を交換
――連絡会を設立して今年で6年目ということですが、現在のメンバー数はどれくらいになりますか。
島本 当初は30名弱で始めたものが、1/31現在では準会員を合わせて256名になっています。そのうち正会員(上級シスアド合格者)は220名です。ここ6年間の上級シスアド合格者が2000名強ですから、約1割の合格者が会員になっている計算になります。準会員というのは、基本的に上級シスアドの受験を予定されている方や上級シスアドに興味を持っている方で、参加するためには正会員の推薦が必要です。
――島本さんはいつから会長を務められているのですか。
島本 2000年からで、今年で3期目になります。連絡会という名前の通り、フラットな組織でバーチャルにお互いを助け合う組織にしたいというのがそもそもの狙いですので、最初の頃は、役職を置き、組織立ったヒエラルキーを作ってしまうことが悪ではないかという雰囲気さえありました。しかし、これだけ会員が増えてくると、いわゆる広報係として活動するような役割が必要となり、それで会長・副会長を設けました。広報係といっても、年会費2000円でやっているような組織ですから、例えば新聞や雑誌などの広告を打ったりすれば1年の予算が飛んでしまいますので(笑)、お金をかけずに口コミで、地道な広報活動を行っています。
――参加者の職種は様々ということでしたが、大まかなメンバー構成を教えてください。
島本 昨年3月に集計したデータでは、ユーザー企業ユーザー部門が全体の56%を占め、その次がユーザー企業情報システム部門の19%、メーカー・ベンダ企業が15%、以下独立5%、その他5%となっています。その他の中には主婦の方も含まれています。(別表参照)。所属する部署としては情報システム部をはじめ、企画部、総務部、経営企画室、営業部、購買部、生産管理などで、いずれも普段の業務でPCやサーバの上に乗っているシステムをうまく利用している方がメインになっています。
――では早速、連絡会の主な活動状況についてお聞かせください。
島本 まずは、メーリングリストによる情報交換です。連絡会のベースとなるものですから、今後もこれが主になってきます。ただ、バーチャルな世界の活動だけではいまひとつピンと来ないので、実際にメンバー同士が会って直接的な交流を図ることを目的とした全国大会と研修会を行っています。全国大会では会員から4名、研修会では2名程度の会員が様々なテーマを掲げてセッションを行い、また外部から講師を呼んで講演をしてもらうこともあります。2001年にはの6月に名古屋で全国大会、12月に東京で研修会を行いました。この他、各地区ごとに、ざっくばらんに意見交換をする「ミニ研修会」も随時行われています。研修会のあとには懇親会と称した飲み会をやるのですが、本音の部分で話をぶつけ合い、相互に理解し合えるし、とても楽しい場になっています。このように、わりと小ぢんまりと集まるケースが多いのも、我が連絡会の特徴かと思います。ちなみに,昨年6月の名古屋での全国大会には80名もの参加者が集まり、ホテルの研修場を借りたのですが、大変な盛り上がりでした。宴会が終わってもまだ喋りたい人が集まって、夜中までロビーでずっと話し込んでいましたからね。今年はまず、2月9日に大阪で「第8回研修会(関西/第5回記念研修会)」を開催します。
● 第8回研修会のプログラム (表組みにしてください)
※ テーマ「情報化の裾野を広げる!」
※ プログラム内容
10:00〜12:00 特別講演「中小企業支援策としてのGIS(地理情報システム)」
講師/谷口清志氏(経営労務研究所ITIC代表)
社会保険労務士&中小企業診断士として、労務関係、公共関連支
援等の業務で活躍中。
12:00〜13:00 上級シスアド連絡会 会員事例発表1
「シスアドの見たインターネット通販」(星野)
13:00〜14:00 昼食休憩
14:00〜15:00 上級シスアド連絡会 会員事例発表2
「ユーザーって誰のことや? 一体、誰を相手にしてんの?」(田堀)
〜会社の情報化やIT講習はユーザーの裾野を広げたのか〜
15:00〜16:00 パネルディスカッション
「中小企業のIT導入を考える」(藤田、岩佐、森下リレースピーチ)
対症療法的なメリットも重要
――女性の参加者も多いのですか。
島本 むしろ女性のほうが活動は活発だと思うことがあります。メーリングリストも200名を超えて、時々議論が白熱してしまうこともあり(笑)、そういう時に交通整理をする役割として議長を必ず置いているのですが、昨年は議長が女性で、副議長も二人のうち一人が女性でした。
――連絡会としての執筆活動も盛んなようですね。
島本 徐々にですが、増えています。もともと上級シスアド試験の合格者の集まりということで連絡会設立後まもなく,試験対策としての「上級シスアド合格論文集」(旺文社)を電子出版で出しました。この他、中小中堅企業向けの「日経IT21」(日経BP社)という雑誌が昨年創刊する際に、システムアナリスト協会と上級シスアド連絡会にお声が掛かり、座談会をやらせていただきました。これがご縁で、その後も特集記事で協力させていただいたりして、未だに連携を図っています。企業内の情報化に関するQ&Aのコーナーでは、毎月2〜3人のメンバーがアンサーを書くようなものもあります。また、同じく日経BP社関連で、やはりシステムアナリスト協会のメンバーと連携する形で「デジタル用語辞典」「情報処理技術者用語辞典」の一部執筆もしました。他にも、試験対策の本は、各メンバーが個別に多数関わっています。あとそれからぜひアピールしておきたい連絡会の活動として、メールマガジン「シスアドちゃんこ鍋」の発信があります。創刊は昨年の3月8日で、これまで24号まで発行しました。何でもありのちゃんこ鍋ですから、硬い話から柔らかい話まで、シスアドの旬のネタをタイムリーに発信し、1800名を超える購読者(無料)がいます。
――参加者の方は、連絡会にどんなことを望んで入会しているのでしょうか。
島本 入会される時に、「入会理由」ということでコメントをいただいています。そこにで多いのは、「試験に合格したけれど、今後どうやって生かしていけばいいのか分からないので、先輩方に聞いてみたい」というものです。それから、上級シスアド連絡会ホームページ(http://www.jsdg.org/)に「連絡会には様々な業種・職種の方がいる」と挙げているのを見て、「自分の幅を広げたい」「異業種の人と交流を深めて、自分を磨きたい」という方、あるいは「試験に合格するだけで本当に意味があるのか」という問題意識を持って入会される方もいます。上級シスアドは免許ではなく能力認定試験ですから、試験を受ける方は資格を取ることそのものが目的ではない方が多いようです。私も同感です。資格を取るのはあくまでもプロセスのひとつであって、そのあとで資格を生かして何をするかという所に本質があると思います。
――連絡会での活動が、本業に反映されることはありますか。
島本 大いにありますね。私の場合はユーザー企業のシステム企画部で仕事をしていますが、「ユーザー企業のシステム部門の人間こそ、上級シスアドになって欲しい」と思い始めたこと自体が、この会に入ったメリットだと思っています。上級シスアドはかくあるべきで、立場上どういうアクティビティーを示さなくてはいけないのか、と考えるようになりました。それと、会社の仕事をしていて、「こういう問題が起きて困っています」と投げかけると、「それはこうすればいい」というアドバイスをもらったりすることも多く、その意味では対症療法的なメリットも多いですね。うちのメーリングリストは非常にアクティブですから、ひとつの投げかけに対してたくさんのコメントやアドバイスをいただけるのが、ものすごく大きな財産になっています。そういうメリットを生かされている会員の方が大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
「結果を出す」ことに意味がある
――今後の連絡会としての予定をお聞かせください。
島本 全国大会と東京での研修会については、現在、時期と場所を検討中です。執筆活動に関しては、先ほどご紹介した辞典がこの春に刊行されますし、それ以外に連絡会の有志が集まって執筆中のプロジェクトもあります。また、組織ができて丸5年経ち、会則や会費なども含めて組織自体を見直す必要性も出て来ていますので、現在の規模に合ったように改正して行くつもりです。ただ、今後の方向性としては、あまりガチガチの官僚的な組織だけは避けたいと思っていますので、インターネットのメーリングリストを活用して、できるだけフラットな今の組織自体はキープして行く所存です。情報交換をし、問題意識を共有して励まし合いましょう、という連絡会の姿勢は今後も不変です。
そのような前提の元に,上級シスアドとしてできることも考えていきたいですね。たとえば,今後「シスアド」という人材はますます必要になってくると思います。そういった人々を育成する,あるいはそのための気づきやきっかけを与える,何かしらヒントを提供できる,といった活動に展開していくことができればそれはそれですばらしいことだと考えています。
――これからシスアド試験を目指す方にひとことメッセージをお願いします。
島本 資格を取るということは、ひとつの目標として有効だと思いますし、何かに挑戦してそれに対して結果が出るということは、人間の素直な気持ちの現れとしても意味のあることではないでしょうか。資格を持っていようがいまいが同じだとか、試験勉強がそのまま実務に生かせるわけではないといった見方をする人もいます。確かにそういう一面もあるかも知れませんが、試験を受けるために勉強したり、目標を持って努力することは決してないがしろにはできません。目標を持って勉強して行くのはすごくいいことですし、合格後には、自分の枠を広げるために上級シスアド連絡会というものがあるということも認識していただいて、これから上級シスアド試験を目指される方々はぜひがんばっていただければと思います。
URL http://www.jsdg.org/
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